ハイエルフの森 ディードリット物語のあらすじ

Amazon.co.jp: ハイエルフの森 ディードリット物語 (角川スニーカー文庫) 電子書籍: 水野 良, 出渕 裕: Kindleストア

本作はロードス島戦記のヒロインであるディードリットに焦点を当てた短編集である。

時系列的に見ると、本編の5巻以降に読むのを推奨したい。

妖精界からの旅人

英雄戦争の終結から五年、アラニア王国ではラスター公爵とアモスン伯爵による内戦が続いていた。

ザクソンの村では魔術師スレインが指導し、王国への不服従と独立の動きを強めていた。

この村には、かつての仲間である自由騎士パーンとハイエルフのディードリットも身を寄せていた。

そんなある日、帰らずの森からハイエルフのエスタスが姿を現す。

彼の目的は、一族の希望であるディードリットをエルフの森へ連れ戻すことであった。

エスタスは人間を愚かで救いがたい種族と見なし、ディードリットが彼らと共に暮らすことを快く思っていなかった。

時を同じくして、ザクソンはラスター軍の脅威にさらされる。

南のハナムの村が焼き討ちに遭い、次はザクソンが狙われるという。極限状態に陥った一部の村人たちは、保身のためにスレインやパーンを敵に差しだそうと裏切りを画策した。

人間たちの醜い争いを目の当たりにしたディードリットは激しい憤りを感じ、破壊的な精霊魔法を放とうとするが、エスタスによって魔法で眠らされてしまう。

パーンは村人たちを信じ、状況を打開するために単身で敵地へと向かった。

そのパーンの無謀ともいえる献身的な姿を見て、裏切りを企てていた村人たちも自らの過ちを悟る。

彼らはパーンを救うために団結し、自警団を組織して立ち上がった。

この光景を目にしたエスタスは、人間が過ちを正し成長する可能性を持つ種族であることを認め、ディードリットを無理に連れ帰ることを断念して独り森へと帰っていった。

開かれた森

英雄戦争から数年後、パーンとディードリットはカノン自由軍を率いるレオナー王に協力し、マーモ帝国に占領されたカノンの解放を目指していた。

彼らはマーモ兵に追われるカラルの村人たちを連れて、フレイム王国への亡命を図る。

しかし、追撃の手は厳しく、背後に帰らずの森を背負った絶望的な状況で包囲されてしまう。

村人たちの命を救うため、ディードリットは帰らずの森にかけられた古代の呪縛を解く決意をする。

森の中に入った一行は、呪いによって意識を失い異界へと取り残されていくが、ディードリットは自分を追ってきたハーフエルフの少女リーフと共に、ハイエルフの村を目指した。

ディードリットは村の長老ルマースに森の開放を請い願うが、長老たちは人間との関わりを拒み、頑なに拒絶する。

ディードリットは自力で呪いを解くため、森の精霊界へ赴き上位精霊エントと盟約を交わそうとするが、圧倒的な力の前に消滅の危機に陥る。

そこをエスタスによって救われた彼女は、ふたたび長老たちの説得に挑んだ。

ディードリットはパーンへの愛を語り、人間とエルフが共存する未来を訴える。

また、ハーフエルフのリーフが語った家族の愛の物語が、変化を拒んでいた長老たちの心を動かした。

長老ルマースは、自分たちこそが過去の遺恨という呪縛に囚われていたことを認め、ついに森の呪いを解除した。

こうして帰らずの森は開かれ、パーンや村人たちは無事に救出された。

復讐の霧

帰らずの森が開かれてから三年後、森に新たな異変が起こる。

古代カストゥール王国の魔術師ストラールが、海底の古代樹を倒されたことへの復讐として、森に死霊の霧を解き放ったのである。

この霧は周囲の生命力を吸い取って成長し、いずれは森を枯死させる恐ろしい魔物であった。

森を通りかかったパーンとディードリットは、エスタスらハイエルフが不死の軍勢と戦っている場面に遭遇し、加勢して魔術師を捕らえる。

しかし、魔術師は嘲笑と共に、霧を消し去る唯一の手段は炎によって焼き払うことだけだと告げる。

森の守護者を自認するエルフたちにとって、自らの手で森に火を放つことは、親しい友を殺すに等しい苦渋の選択であった。

エスタスをはじめとするエルフたちが苦悩するなか、ディードリットが火を放つ役目を引き受ける。

彼女は単なる破壊ではなく、浄化と再生を司る炎の上位精霊フェニックスを召喚することを決意する。

かつてフレイムで出会ったナルディア姫の最期を思い起こし、彼女は全神経を集中させてフェニックスに呼びかけた。

フェニックスの青い炎は死霊の霧を一瞬で焼き尽くし、森の一部は灰に包まれた。

しかし、その灰は次なる生命を育む糧となり、森は再生への第一歩を踏みだす。

この事件を通じて、エルフたちは人間との交流を絶つことの危険性を再認識し、外の世界に対して心を開きつづけることを決意した。

帰らずの森の妖精

これはディードリットが人間界へ旅立つ直前の物語である。

当時、まだ森は呪いによって閉ざされており、ディードリットは外の世界への好奇心を抑えきれずにいた。

彼女は結界の境界付近で、病の母を救うために金を求めて狩りをする人間の若者ジョルドと出会う。

ジョルドは、かつて森に入ったまま行方不明となった父親を探していた。

ジョルドの父は、森の呪いに捕らわれ、意識のないまま異界を彷徨う幽霊のような存在となっていた。

エスタスは森の平穏を乱すこの人間を始末するために、迷いの森へと向かう。

ディードリットはエスタスを止めるために後を追い、禁じられた精霊魔法を駆使して対抗する。

その過程で精霊が暴走する危機を招くが、エスタスによって救われる。ディードリットはジョルドとの出会いを通じて、人間が持つ短命ゆえの情熱や家族への愛を知り、彼らを単なる野蛮な種族と切り捨てることはできないと感じはじめていた。

エスタスはディードリットの熱意と、人間が示した意外な高潔さに触れ、ジョルドの父親を呪縛から解放することを認める。

この出来事によってディードリットの決意は揺るぎないものとなり、彼女は自分なりの真実を見つけだすため、長老たちの許しを得て人間界へと旅立っていった。