2巻「炎の魔神」のあらすじ

新装版 ロードス島戦記 (全7巻) Kindle版

英雄戦争から二年後のロードス島

英雄戦争の終結から二年、呪われた島と呼ばれるロードス島では各地で依然として戦乱の火がくすぶり続けていた。

パーンとハイエルフのディードリットは、かつての仲間であるウッド・チャックの肉体を支配した灰色の魔女カーラを追い、各地を巡る旅を続けていた。

彼らは旅の途上で、砂漠の王国フレイムがかつての仇敵である炎の部族による猛攻を受け、危機に瀕しているという噂を耳にする。

パーンたちはフレイムの首都ブレードを訪れ、かつての戦友である傭兵王カシューと再会を果たした。

カシューは、炎の部族がこれまでの小競り合いとは比較にならない強力な炎の魔法を操り、街や村を焼き尽くしている現状を語った。

フレイム王国と炎の部族の対立

砂漠の民は、風の部族と炎の部族というふたつの部族に分かれ、水と土地を巡って数百年にわたる争いを続けていた。

炎の部族の若き女族長ナルディアの側近には、アズモという神官がおり、彼は古代の遺跡から炎の上位精霊であるエフリートを解放し、その力でフレイムを圧倒していた。

ディードリットは精霊使いとしてエフリートとの接触を試みたが、その強大な魔力の前に圧倒され、パーンに助けられるものの深い精神的消耗を負うことになった。

その後ヒルト近郊での戦いに参戦したパーンだったが、自ら囮となって味方を逃がし、ナルディアと一騎打ちを演じる。

しかし背後からサラマンダーの炎を受けて意識を失い、捕虜として囚われてしまう。

その後、パーンはディードリットや傭兵のマーシュ、フォース、デニたちの決死の救出作戦によって救い出された。

砂塵の塔での試練と精霊王の解放

炎の部族が強力な上位精霊エフリートを解放し支配している現状に対し、パーンは古代王国の魔術師であるカーラがその手法を神官アズモに教唆したのではないかと推測した。

灰色の魔女に支配されていた過去を持つアラニアのレイリアの元を訪れ、カーラの記憶を辿り、この戦争が古代王国の魔術師たちによる策略であることを突き止めた。

かつての精霊使いアザートが風の王ジンと炎の王エフリートと交わした盟約により、この地は精霊力が偏り、豊かな草原から不毛の砂漠へと変貌していたのである。

アズモはこの盟約を利用してエフリートを支配していたが、その陰には灰色の魔女の教唆があった。

ディードリットは古い盟約を破棄して精霊の調和を取り戻すため、風の精霊力が最も強く働く砂塵の塔へと向かう決意を固めた。

彼女は塔の頂上から風の精霊界に足を踏み入れ、風の王ジンが課した過酷な精神的試練に耐え抜き、ついに新たな盟約を交わすことに成功した。

最終決戦と火の部族の終焉

フレイム軍と炎の部族は、ブレードの街の外で運命を決定づける最終決戦を開始した。

アズモが再びエフリートを召喚してフレイム軍を焼き払おうとした際、ディードリットはジンの力を借りてその炎を封じ込め、精霊同士を対峙させることで戦場から魔法の脅威を取り除いた。

魔法の援護を失った炎の部族は、数で勝るフレイム軍によって次第に追い詰められていった。

自らの野望のためにエフリートを利用していたアズモは、精霊への支配力を失い、最期はレイリアの手によって討ち取られた。

戦いの敗北を悟ったナルディアは、カシュー王からの和平の提案と求婚を断り、部族の誇りと仲間の弔いのために、実体を失いつつあったエフリートの炎の中に身を投じた。

不死鳥の誕生と新たなる旅立ち

ナルディアを飲み込んだ炎は消え入ることなく、真紅に燃え上がり、そこから伝説の精霊王である不死鳥フェニックスが姿を現した。

フェニックスは破壊の後の再生を司る存在であり、その力によって砂漠には十数年ぶりに恵みの雨が降り注いだ。

この奇跡によって古代の呪縛から大地が解放され、砂漠がかつての肥沃な大地へと戻る長いプロセスが始まった。

カシュー王は投降した炎の部族の民をフレイムの国民として受け入れ、長きにわたる部族間の憎しみに終止符を打った。

戦いを終えたパーンは、カシューからアラニアの王位に就くよう誘いを受けるが、一国の重責を担うよりも自由な立場で人々を救う道を選び、ディードリットとともにカノンへと旅立っていった。