9巻のあらすじ

GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (全29巻) Kindle版
GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (全29巻) Kindle版

『境界線上のホライゾンIX』(上・下)は、歴史の巨大な転換点である「本能寺の変」と、それと並行して行われる「賤ヶ岳の戦い」を軸に、極東の運命と世界の真実が交錯する物語である。

京都の崩壊と混乱の幕開け

物語の舞台は、歴史再現の重要拠点である京から始まる。

内裏のあった場所が直径五百メートルの巨大な穴となって崩落し、京の町は航空艦による避難活動が行われる大混乱に陥る。

この地脈の赤い発光を伴う大規模な地盤沈下は、世界の終焉を指す「末世(まつよ)」の影響が深刻化している象徴でもあった。

三征西班牙との外交交渉

京の騒動から一時退避した三征西班牙(トレス・エスパニア)は、武蔵との会議を求めて外交用港に着艦する。

副会長フアナを中心とする三征西班牙側は、聖連の一国として本能寺の変の直前交渉を望み、武蔵副会長の本多・正純らとの間で緊迫した政治的駆け引きが展開される。

この交渉では、アルマダ海戦以降の各国のパワーバランスや、六護式仏蘭西(エグザゴン・フランセーズ)が欧州覇王としての地位を明確にしたことによる国際情勢の変化が議論の焦点となる。

また、武蔵は三征西班牙を傭兵として雇い、四国の讃岐まで基本船殻部を護衛させるという、後の開拓事業を見据えた「新大陸の南北分割支配」を誘う高度な交渉を行う。

「賤ヶ岳の戦い」の並行進行

京都での本能寺の変と並行して、北陸国境付近では柴田・勝家率いる柴田班と、竹中・半兵衛が指揮する羽柴班による「賤ヶ岳の戦い」が歴史再現として開始される。

この戦いは羽柴秀吉の天下統一に向けた不可避のステップであり、前田・利家ら有力武将たちの複雑な思惑が絡み合う激戦となる。

柴田班は可児・才蔵らの安全を確保しつつ、羽柴班との消耗戦を展開し、次代への継承を巡る「殺し合い」という名の歴史再現に身を投じる。

「本能寺の変」と信長の真意

物語のクライマックスは、京の御所・内裏を舞台とした本能寺の変の再現である。

武蔵勢は、明智・光秀の襲名権を受け継いだ立場としてこの歴史再現に介入する。

ここで明かされるのは、織田・信長の死と「創世計画」の密接な関係である。

信長は、自らを「運命(さだめ)」の人格を受け入れる器とし、大罪武装(ロイズモイ・オプロ)を用いて第二の月と共にその人格を消去することで末世を解決しようとしていた。

決着と世界の新局面

激闘の末、信長は自らの死をもって歴史再現を完遂し、第二の月へと昇ることで「創世計画」の第一段階を執行する。

これにより、地上では本能寺の変が達成された事実と、創世計画の発動が確定したことが全世界に示されることとなった。

武蔵勢は、信長の犠牲と引き換えに示された未来に対し、「何もかも無かったことにさせない」という強い決意を胸に、末世解決に向けた次なる戦いへと向かう準備を整えるのである。