11巻のあらすじ

『境界線上のホライゾンXI』(上・中・下)は、物語の完結編にあたり、武蔵勢と羽柴勢による地球一周の激闘後の合流から、国際会議「ヴェストファーレン会議」、そして世界の終焉「末世(まっせ)」を巡る最終決戦までが描かれている。
勢力合流と「無血の関ヶ原」
武蔵と大和(羽柴勢)による成層圏での直接対決を経て、帰還した両勢力は、世界を救うために「武蔵勢」として合流することを決定する。
武蔵上の浅間神社では講和会議が執り行われ、羽柴十本槍の面々が「未来から来た武蔵の子供たち」としての立場を整理し、親世代である武蔵の学生たちと手を取り合う。
この合流を確固たるものとするため、歴史再現上の重大な転換点である「関ヶ原の戦い」が、武蔵の艦上を舞台とした「無血の戦い」として行われる。
武蔵勢は、歴史再現の政治的カードを巧みに利用し、武蔵が極東の主権を担う正当性と、大国に対抗しうる実力を世界に示したのである。
ヴェストファーレン会議と「新秩序」
物語の舞台は、三十年戦争の終結を決定づける国際会議「ヴェストファーレン会議」の場へと移る。
教皇総長インノケンティウス十世やスレイマンといった各国の有力者が集う中、武蔵副会長の本多・正純は、従来の歴史再現システムに代わる「新秩序(ノヴム・オルド)」を提言する。
これは、各国が極東の暫定支配から脱し、未知の領域である外界への開拓を進めることで、歴史の停滞を打破しようとする壮大な構想であった。
会議では各国の利害が激しく衝突するが、武蔵勢はこれまでの戦いと交渉で築いたコネクションを駆使し、世界を新たな方向へと導こうとする。
「末世」の真実と運命の自殺
会議の最中、世界の希薄化を招く「末世」の真実が、人格化された「運命(さだめ)」による自殺願望であることが明かされる。
運命は、数千年にわたり人々の死を司ってきた役割に耐えかね、自ら消滅を望んでいるのである。
羽柴(P.A.Oda)が推進する「創世計画」は、この運命の人格を処刑し、世界を強制的にリセットすることで存続を図るものであったが、武蔵勢は「誰も失わせない」方法での解決を模索する。
運命が織田・信長の姿を借りて現れ、人類に絶望を突きつける中、武蔵勢は運命そのものを救う決意を固める。
第二の月への最終決戦
末世解決のため、武蔵と大和は運命の本体が潜む「第二の月」へ向けて、高高度の流体通路「道」を急上昇する。
運命は、武蔵勢の「幸運な未来の姿」である「瓦解の総勢(がかいのそうぜい)」を刺客として放ち、彼らの行く手を阻む。
ミトツダイラ、二代、成実、ナイト、ナルゼといった主力メンバーたちは、自分たち自身の完成形とも言える強敵と対峙し、極限の戦闘の中で「今を生きる」自らの在り方を証明していく。
各国の代表者たちも武蔵の支援に回り、全人類が一丸となって天上の障害を打ち破る。
境界線上のホライゾン
ついに第二の月へ到達した葵・トーリとホライゾンは、運命との最終的な対話に臨む。
トーリは一方的な制圧ではなく、自分たちが運命を支え続けることを約束し、運命に「生きる理由」としての希望を与える。
運命は自らの消滅を思い留まり、第二の月は砕けて地球を囲む賢鉱石のリング(月の指輪)へと姿を変える。
末世は回避され、人々は失われた関係を取り戻したまま新しい時代を迎えることとなった。
武蔵の面々は、それぞれの個人的な願いを抱きつつ、無限に広がる境界線の向こう側、新天地へと旅立っていくのである。