10巻のあらすじ

『境界線上のホライゾンX』(上・中・下)は、歴史の転換点である「本能寺の変」直後の混乱から、武蔵勢による決死の脱出劇「伊賀越え」、そして物語の根幹に関わる「羽柴十本槍」の正体と主人公・葵・トーリの「死と復活」を描いた、シリーズ最大の転換点である。
「伊賀越え」と武蔵の脱出
本能寺の変が完遂され、織田・信長が歴史から退場した直後、明智・光秀の襲名権を譲り受けた武蔵は、羽柴勢による「山崎の合戦(仇討ち)」の標的となる。
この絶体絶命の窮地を脱するため、本多・正純らは徳川家康の故事に倣った「伊賀越え」の歴史再現を解釈として適用し、本拠地である三河(現在は湾となっている)への強行突破を試みる。
巨大航空戦艦「安土」の猛追と奇策
武蔵を追撃するのは、羽柴勢の最新鋭巨大航空戦艦「安土」である。
燃料枯渇と損傷に喘ぐ武蔵は、地形で加速を稼ぐ「エアポケット」戦術や、艦内に蓄積された廃材や大量の漫画草紙(同人誌)を投棄して後方の「安土」を心理的・物理的に攪乱する「ゴミ投棄戦術」で対抗する。
この攻防戦の中で、武蔵側とP.A.Oda側の高度な情報戦・論理戦が展開される。
羽柴十本槍の正体と「未来」の真実
戦いの中で、武蔵の前に立ち塞がる「羽柴十本槍」の衝撃的な正体が明かされる。
彼らは、末世解決に失敗して世界が消滅した「未来」において、現在の武蔵の学生たち(三年梅組の面々)がもうけた子供たちであった。
彼らが敵として現世に介入した真意は、親たちが辿った「失敗の歴史」を繰り返させず、最終決戦で親たちが全滅する運命を回避し、彼らを保護することにあったのである。
この事実は、武蔵勢に自らの「親としての責任」と「未来の選択」を突きつけることとなる。
葵・トーリの死と「天の岩戸」の復活
物語中盤、主人公の葵・トーリに最大の危機が訪れる。
彼はかつて浅間神社との間に「悲しい感情を得たら死ぬ」という契約を交わしていたが、十年前のホライゾンとの別れなどの「哀しみ」を認めた瞬間、術式が発動し没収のサインと共に命を落としてしまう。
ホライゾンや仲間たちは、トーリを連れ戻すために「天の岩戸」の歴史再現を利用した儀式を敢行する。
この儀式において、サクヤやイザナミを巡る「産み」の理と、アマテラスの嫉妬を突いた「理に適ったバグ」を発生させることで、トーリは「現人神(あらひとがみ)」として奇跡的な復活を遂げる。
決着と次なる舞台へ
激闘の末、武蔵勢は「伊賀越え」を成立させて三河湾へと到達し、外交的な生存権を再確立する。
トーリは「現人神」の力を得たことで以前の呪縛を克服し、仲間と「信じ合う願い」を条件に流体を供給する新たな力を得る。
物語は、羽柴勢が「創世計画」の正当性を世界に示そうとする中で、武蔵が「誰も失わせない」方法での末世解決を胸に、世界の命運を決する最終決戦地「ヴェストファーレン」へと向かう準備を整えるところで幕を閉じる。