境界線上のホライゾンとは?

本作『境界線上のホライゾン』は、膨大な情報量によって構築された独特の世界観と、特殊な設定に基づく「歴史再現」を軸とした物語である。
以下に本作の主な特徴をまとめる。
目次
世界観
本作の舞台は、かつて人類が天上から戻った際に起きた「重奏世界崩壊」を経て、現実世界と異世界(重奏領域)が合一した後の極東である。
聖譜(テスタメント)
人類が再び天上へ戻るため、前地球時代の歴史を記した「聖譜」に従って歴史をやり直す「歴史再現」が行われている。
末世(まっせ)
歴史の更新が止まることで世界が希薄化し消滅する危機「末世」が迫っており、その解決が物語の大きな目的となっている。
教導院
各国は聖譜連盟(聖連)の下、政治・軍事機関の代理として「教導院」を設立し、学生たちが歴史再現や国家間の抗争を担っている。
登場人物と特殊武装
主人公とヒロイン
感情を失い自動人形となったヒロイン、ホライゾン・アリアダストの感情を取り戻すため、無能と称される総長兼生徒会長の葵・トーリが世界征服を掲げて立ち上がる。
大罪武装(ロイズモイ・オプロ)
ホライゾンの感情を素材として作られた九つの強力な武装であり、末世を解決するための鍵とされる。
巨大航空都市艦「武蔵」
主人公たちが拠点とする「武蔵」は、極東唯一の独立領土であり、八隻の艦から構成される巨大な航空都市艦である。
各艦には独立した行政区画や居住区があり、艦長級の自動人形によって統御されている。
武蔵は他国からの監視により「境界線上」しか移動できないという制約を持つが、非常に強力な防衛力と航行能力を有している。
叙述スタイルとコミュニケーション
本作の大きな特徴の一つに、キャラクター同士のやり取りを記録した実況通神(チャット)形式の描写が多用される点がある。
これにより、戦場や会議の最中でも梅組メンバーによるメタ的なツッコミや、高度で難解な議論、さらには下ネタを交えた喜劇的な交流が同時並行で描かれる。
また、物語の根底には、互いに相容れない「平行線」のような立場にある者たちが、納得できる場所としての「境界線(ホライゾン)」を見出していくという哲学的なテーマが流れている。
本作は、これら緻密なSF的・ファンタジー的なガジェットを駆使しながら、個人の夢や関係性を守るために巨大な運命(歴史)に抗う群像劇であるといえる。
本作を読む上での注意事項
分量
本作はライトノベルとしては異例の分量を誇り、電撃文庫最厚記録を打ち立て「鈍器」とまで揶揄された。
読者はまずその物理的な厚みとシリーズの長大さに直面することになる。
シリーズの各巻は非常に厚く、一つの「巻数」が「上・下」あるいは「上・中・下」の複数冊に分割されて刊行されるのが通例である。
各分冊に含まれる章数も非常に多く、一冊の中に20〜30以上の章が含まれる事がある。
例えば、第11巻(下)では第94章まで達しており、物語の密度が非常に高い。
性的描写
本作は緻密なSF・ファンタジー設定と国際政治劇が主軸であるが、それと同等、あるいはそれ以上に過激な性的ユーモアや描写が「日常」として挿入されるのが大きな特徴である。
以下に、読者が注意すべき主要な留意事項をまとめる。
主人公による日常的な露出とセクハラ的言動
本作の主人公である葵・トーリは、極東の代表(総長兼生徒会長)という立場にありながら、頻繁に全裸(全裸迷彩浴衣やマフラーのみの状態を含む)で活動する。
彼は「ゴッドモザイク」と呼ばれる光学隠蔽術式によって局部を隠しているが、視覚的には全裸として描写されることが常態化している。
また女性キャラクターの胸を揉む、スカートをめくる、あるいは性的好奇心を剥き出しにした発言を行うことが、深刻な戦況や政治交渉の最中でも「ボケ」として頻発する。
これらは作中で「不規則言動」として扱われ、周囲のキャラクターによる暴力的なツッコミ(股間への攻撃など)で収束するのが一連の流れとなっている。
性的行為の具体化
物語の中盤以降、特定のキャラクター間において、より直接的かつ具体的な性的描写や、それに類する密接な身体的接触が描かれるようになる。
ある儀式においては、異界(神界)の時間加速を利用して膨大な回数のいわゆる「合体」を行う描写がある。
これらは「一五〇一回」や「一八七三回」といった具体的な数字を伴って語られる。
その上、唇を重ねる、相手の体を舐める、あるいは衣服越し、または直接肌に触れる際の感覚が、非常に詳細かつ官能的に描写される場面が少なくない。
サブカルチャー(エロゲ・同人誌)
本作の世界観およびキャラクターの思考には、現実世界の成人向けゲーム(エロゲ)や二次創作(同人誌)の文化が強く投影されている。
キャラクターが性的シチュエーションを説明する際に、エロゲの用語やフラグ(ルート、攻略、CG回収など)を頻繁に用いる。
また、作中で実際にエロゲが流通しており、それが情報の隠蔽や交渉の道具、あるいはキャラクターの趣味として機能している。
主要キャラクターの一人であるマルガ・ナルゼは同人絵師であり、周囲の人間関係や事件を勝手にアダルトな内容に変換して描き、それを「資料」として活用したり販売したりしている。
特殊な性癖やフェティシズムの肯定
物語には、一般的ではないフェティシズムや性的嗜好を持つキャラクターが多数登場する。
「巨乳」と「貧乳」の対比は、しばしば政治的な対立やカースト、あるいは歴史の安定性に関連する理論として語られる。
また、「人妻」「姉」「女装」「触手」といった属性が、物語の進行や戦闘の動機に深く関わっている。
まとめ
結論として、本作を読む上では、高度な政治交渉や壮絶な空中戦が繰り広げられる一方で、非常に奔放かつ露骨な性的描写や下ネタが作品の不可欠な要素として、全編にわたって展開されることを念頭に置くべきである。
これらは単なる添え物ではなく、キャラクターの行動理念や世界の根源的なルールに深く結びついている。
それらを含めて「境界線上のホライゾン」という物語を享受する姿勢が求められる。
ゆえに本作を読み進められる読者層はとても限定される。