ディードリット

目次
外見
種族と身体的特徴
ディードリットは、不老不死に近い永遠の生命を享受するハイエルフ(高等妖精族)である。
身体つきは非常に細身で華奢であり、白樺の幹のように白くしなやかな四肢を持っている。
身長は人間よりもわずかに低く、その小柄な体格から、事情を知らぬ人間からは子供と見間違われることもある。
しかし、その細い身体には無駄な肉がなく、見た目からは想像もできないほどの俊敏さと跳躍力を備えている。
顔立ちと髪
顔立ちは細面で整っており、人間を惹きつける神秘的な美しさを持っている。
瞳は水色や碧色と表現され、細めで端がつり上がっている。鼻は小さく形が良く、その下には白い歯が覗く小さな赤い唇がある。
最大の特徴はエルフ特有の先端が尖った細く長い耳であり、金色の髪の間から突き出ている。
髪は白銀に近い金色の長髪で、春のそよ風のように柔らかに流れる様子が特徴的である。
肌の性質
肌は透き通るような白さが際立っており、しばしば白樺の幹に例えられる。
この肌は非常に繊細に見えるが、強い日差しを浴び続けても赤くなったり日焼けしたりすることがないという、人間とは異なる性質を持っている。
普段の装い
若葉色のマントや衣服を身にまとい、頭には羽根付きの帽子を載せている。
防御用として、山ぶどうの実で染め上げられた、赤色の金属で縁取りされた紫色の革製の胸当てを着用することがある。
装飾品としては、木の実で作られた耳飾りや額飾り、そして精霊を封じ込めるための六角柱の水晶の首飾りを愛用している。
腰には、柄や鞘に細かな彫刻が施された美術品のような細剣(レイピア)を帯びている。
社交の場での正装
ヴァリスの王宮やフレイムの宴に参加した際には、普段の戦士装束とは異なる華やかなドレス姿を披露している。
フレイムの宴では、薄い緑色のシュミーズ・ドレスを纏い、胸元にはルビーをあしらった銀製の木の葉のブローチを付けていた。
この際、袖口にはレースの縁取りがある肘までの長さの手袋を着用し、普段は流している髪を頭の上で高く結い上げた姿を見せ、周囲の人間を嘆息させるほどの美しさを誇っていた。
性格
外界と人間への強い好奇心
ディードリットは、ハイエルフという不老の種族でありながら、変化のないエルフの森の生活に飽き飽きし、外界や人間に対して強い好奇心を抱く性格である。
彼女はエルフの森が千年の間、子供が生まれず緩やかな滅びの道を歩んでいるにもかかわらず、それに対して何の手だても打とうとしない同族のあり方にいら立ちを覚えていた。
そのため、長老たちの反対を押し切ってまで人間の世界へと飛び出した経緯がある。
人間を愚かで野蛮な生き物だと見なすエルフ特有の偏見も持ち合わせてはいたが、それ以上に、短命ゆえに激しく生き、絶えず成長し変化しつづける人間に強い興味と可能性を感じている。
誇り高さと種族的な潔癖さ
ハイエルフとしての自尊心が非常に高く、人間から無礼な扱いを受けた際には即座に反発する気の強さを持っている。
また、エルフの森の守護者であるという自覚が強く、自然や動物をむやみに傷つける行為を嫌悪する。
特に、すべてを焼き払い破壊する炎の精霊に対しては、植物を育む水や風の精霊を慈しむエルフとして強い忌避感を抱いていた。
しかし、旅を通じて炎の精霊が持つ再生という側面も理解するようになり、種族としての凝り固まった価値観を柔軟に変化させる聡明さも備えている。
感情の豊かさと少女のような一面
エルフは本来、強い感情に流されることを戒める種族だが、ディードリットは人間界で暮らすうちに非常に感情豊かな性格となった。
喜怒哀楽が激しく、パーンや仲間の前では素直に笑ったり、時には子供のように泣きじゃくったりする姿を見せる。
また、負けず嫌いなところがあり、剣の稽古や知恵比べで人間に後れを取ると、露骨に不機嫌になったり、意地を張ったりすることもある。
こうした多感な性質は、他のハイエルフからは人間界の空気に毒されて混乱していると見なされることもあるが、彼女自身はそれを自分らしい生き方として受け入れている。
パーンに対する深い愛情と独占欲
自由騎士パーンに対しては、自らの命を捧げても惜しくないほどの深い愛情を抱いている。
旅の初期から彼の危うい正義感や無鉄砲さを心配しつつ、常にその背中を追い続け、支えることを喜びとしている。
一方で、パーンに対する独占欲や嫉妬心も人一倍強く、彼が他の女性、特に女戦士シーリスのような人間の女性と親しくしていると、露骨に不機嫌になったり、意地悪な態度をとったりする。
パーンの鈍感さに呆れながらも、彼が自分をひとりの女性として特別に扱ってくれることを切に願っている。
理想を追求する意志の強さ
単なる好奇心で森を出ただけでなく、人間とエルフが真に理解し合い、共存できる未来を信じて行動する強い意志を持っている。
彼女は、閉ざされたエルフの森を開放するために命がけの試練に挑み、保守的な長老たちの心をも動かした。
困難な状況にあっても希望を捨てず、自分自身の目で見極めた真実を大切にする姿勢は、仲間の勇者たちからも高く評価されている。
自由騎士パーンとともに、ロードスの各地を巡りながら平和のために剣を振るうその姿は、後の世において、エルフと人間を結びつけた伝説の証として語り継がれることになる。
能力
精霊魔法の行使能力
ディードリットは、ロードス島でも稀少な高等妖精族であるハイエルフの精霊使いである。
彼女の能力の中核をなす精霊魔法は、物質界とは異なる位相に存在する精霊界の住人の力を借りて、その事象を現世に引き起こすものである。
魔法を行使する際には、人間の言葉ではなく精霊語と呼ばれるテレパシーに近い意識の伝達手段が用いられる。
精霊を呼び出すためには、大地の精霊なら剥き出しの地面、風の精霊なら戸外の風というように、その属性に応じた門を開くための鍵が必要となる。
契約精霊とその効果
ディードリットが頻繁に使用するのは、風の精霊シルフや水の精霊ウンディーネである。
風の魔法は多岐にわたり、飛来する矢を逸らすシルフの守り、大気の震えを止めて音を消し去る沈黙、さらには遠方の相手に声を届ける遠話などが挙げられる。
水の精霊ウンディーネの力を用いることで、水の中での呼吸や水圧への耐性を得ることが可能であり、これを利用して河底を歩いて移動する隠密行動も行っている。
また、植物の精霊であり精神を司るドライアードの力を借りることで、植物の枝や雑草を自在に伸ばして敵を捕らえたり、相手の心に干渉して魅了したりすることも可能である。
上位精霊の使役と盟約
ディードリットは通常の精霊使いが扱えないような上位精霊と交信する能力を備えている。
風の上位精霊である風の王ジン(イルク)を召喚し、その強大な精霊力で広範囲に竜巻を引き起こすことができる。
特に「風と炎の砂漠」の事件においては、ジンから新たな盟約者として認められ、砂漠を元の肥沃な大地に戻すための事象を引き起こした。
また、魔竜シューティングスターとの決戦においては土の上位精霊ベヒモスを召喚して、足元の地面を引き裂き身動きを封じるなどの強力な戦術を展開した。
火竜山でベヒモスを召喚したことは、彼女の精霊使いとしての成長を示す重要な局面であった。
さらに、本来エルフが忌避するはずの炎の属性についても、上位精霊フェニックスを召喚して死霊の霧を浄化し、森の再生を促すという離れ業を成し遂げている。
ディードリットにとって、風の王ジン以外の上位精霊を召喚することは非常に稀な事例である。
彼女自身、通常の精霊使いが扱えないような上位精霊と交信する能力を備えてはいるが、上位精霊は支配する対象ではなく、あくまで協力を仰ぐ存在であると考えている。
剣技と身体能力
魔術だけに頼らず、ディードリットは優れた戦士としての側面も持っている。
彼女は柄や鞘に細かな装飾が施された細剣(レイピア)を愛用している。
エルフ特有の非常に細身で華奢な身体つきをしているが、その動きは人間を遥かに凌駕するほど俊敏である。
戦いにおいては力で圧倒するのではなく、素早い身のこなしと正確な太刀筋、さらには跳躍力を活かした攻撃を得意とする。
高い跳躍から敵の背後を取ったり、滑るようなステップで攻撃を回避したりするほか、手刀や回し蹴りといった格闘技術も併用する。
その実力は、熟練の戦士でも容易に後れを取るほどに完成されている。
特殊な知覚能力
エルフという種族の特性として、ディードリットは人間よりも遥かに優れた感覚を有している。
視覚面では、普通の人間の目には見えない精霊の姿や、生命体が放つ淡い光を捉えることができるため、夜闇の中であっても不自由なく行動することが可能である。
聴覚も極めて鋭敏であり、人間には聞こえないような微かな物音や、風の囁きに含まれる情報を聞き取ることができる。
また、森の民としての本能的な方向感覚に加え、森の精霊たちの気配を感じ取ることで、入り組んだ森林の中でも迷うことなく目的地へ進むことができる特性を持っている。
生い立ち
帰らずの森における希少な子供
ディードリットは、ロードス島の南西部に広がる帰らずの森に住むハイエルフ(高等妖精族)の一族である。
彼女はこのハイエルフの部族において、過去一千年のあいだにただひとり生まれた子供であった。
部族全体がもはや子供は生まれないとあきらめていた時期の誕生であったため、彼女は一族全体の希望として、生命の樹の苗を育てるかのように大切に守り育てられた。
彼女は成人するまでの期間を非常に幸福に過ごし、その間にさまざまな種族の言葉や精霊魔法、武器の扱いなどを学んだ。
家族の構成と生活形態
帰らずの森にいたとき、ディードリットは父と母と一緒に暮らしていた。
ハイエルフの社会では、夫婦や親子であってもそれぞれが独立して暮らすのが一般的であり、家族が同居しているディードリットの家は村の中でも珍しい例である。
彼女の両親は村の中央にある古代樹から妖精界を通る近道を利用できる場所に、小さな丸太小屋を構えて住んでいる。
家の中には家具があり、精霊使いである母親が光の精霊ウィル・オー・ウィスプを召喚して明かりを灯している。
父親の性格と役割
ディードリットの父親は、木片をナイフで削って道具を作るなど、エルフ特有の素朴で実用的な手仕事を行っている。
彼は保守的なハイエルフの価値観を強く持っており、人間を野蛮で危険な存在として忌み嫌っている。
ディードリットが村の結界を破って人間を救おうとした際には、十日間にわたって彼女のそばに付き切りで、ハイエルフの何たるかを厳しく説教した。
彼は変化を拒み、村に人間が立ち入ることで自分たちの平穏な暮らしが脅かされることを何よりも恐れている。
母親の慈愛と配慮
ディードリットの母親は、旅から戻った娘を優しく抱きしめて出迎えるなど、慈愛に満ちた人物である。
彼女は娘が人間界に興味を持つことに理解を示しつつも、村の長老や規律を重んじる立場から、ディードリットが周囲に迷惑をかけないよう常に心を配っている。
娘が感情的になって父親や村の決定に反発した際には、彼女をなだめようと優しく肩に手をかけるなどの配慮を見せている。
彼女もまた精霊使いとしての能力を持っており、日常生活の中で精霊の力を活用している。
人間との関わりに対する家族の反応
ディードリットの両親は、彼女が人間の戦士であるパーンと共に暮らしていることを知った際、大きな衝撃を受けた。
彼らは死すべき定めの人間を愛するというエルフの選択が、娘に不幸をもたらすと信じて疑わなかった。
パーンが初めて村を訪れた際も、彼らは礼儀正しく挨拶は返したものの、決して歓迎しているとは言い難い態度であった。
しかし、ディードリットの決意は固く、将来的にパーンとの間に子供を授かることがあれば、たとえ不幸になると分かっていても産みたいという意志を長老たちの前で明言している。
人間関係
パーン
エト
冒険を共にした初期の仲間関係
ディードリットとエトは、自由騎士パーンを中心とする初期の冒険者仲間のメンバーであった。
ふたりは魔女カーラを巡る戦いや英雄戦争において、生死を共にする過酷な旅を続けてきた経緯がある。
エトはパーンの幼なじみであり、至高神ファリスの神官として一行の精神的な支えとなっていた。
ディードリットは人間という種族に対して当初は偏見を持っていたが、エトのような誠実な人間と接することで、その可能性を認めていった。
立場の変化と再会時の葛藤
英雄戦争の終結から数年が経過し、エトはヴァリス王国の神官王として即位した。
これに対し、ディードリットはパーンとともにカノン自由軍に加わり、各地を転戦する日々を送っていた。
数年ぶりにヴァリスの王宮で再会した際、エトが公的な場において厳格で冷徹な王としての態度を崩さなかったため、ディードリットは激しい不満を感じた。
彼女は、王という立場になったことで昔の友情や人間としての価値が変わってしまったのではないかと疑い、憤りをあらわにしている。
沈黙の間での和解と信頼
王宮内にある沈黙の間において、エトが王の仮面を脱ぎ捨てて本来の優しい笑顔を見せたことで、ディードリットの不信感は解消された。
エトは、ヴァリス国内の複雑な政治状況や騎士団と神官団の対立を収めるために、人前ではあえて厳格な王を演じなければならない苦悩を告白した。
ディードリットは、エトが依然として自分たちの良き友人であることを確信し、歓喜をもって再会を喜んだ。
その後、邪神復活を阻止するための戦いにおいても、ふたりはそれぞれの立場から協力しあうこととなった。
永い時を見据えた友情
マーモでの最終決戦を経て、ロードス島に平和が訪れた後、一行はそれぞれの道を歩みはじめた。
エトはヴァリスの復興と次代の指導者の育成に専念することとなり、ディードリットはパーンと共にロードス各地を巡る旅に出た。
別れの際、ディードリットはエルフとしての長い寿命を意識しつつ、人間であるエトとの再会を願った。
ふたりの間には、王と一介の精霊使いという身分の違いを超え、かつて共に戦った戦友としての深い絆が残されている。
スレイン
初期の冒険から続く信頼関係
スレインとディードリットは、自由騎士パーンを中心とする初期の冒険者仲間のメンバーとして出会った。
スレインはアラニアの賢者の学院で学んだ魔術師であり、ディードリットは帰らずの森からやってきたハイエルフの精霊使いである。
ふたりはパーンや至高神の神官エト、ドワーフのギム、盗賊のウッド・チャックとともにロードス島を旅し、魔女カーラやマーモ帝国との戦いを経験した。
ディードリットは当初、人間を野蛮な種族と見なす傾向があったが、スレインのような知恵ある人間と接することで、その種族特有の偏見を改めていった。
スレインもまた、ディードリットが持つハイエルフとしての高い資質と、人間界で暮らすうちに豊かになっていく彼女の多感な内面を温かく見守っていた。
ザクソンの独立運動における協力
英雄戦争の終結後、ふたりはアラニアのザクソンの村に身を寄せ、村の独立と自治を守るために協力した。
スレインは村の相談役として指導的な立場にあり、ディードリットはパーンとともにその独立運動の活動を支えた。
内戦の続くアラニアにおいて、ラスター公爵の軍勢から村を守る際、スレインの古代語魔法とディードリットの精霊魔法は村の自警団にとって不可欠な力となっていた。
ディードリットはスレインの知識と冷静な判断力を高く評価しており、困難な状況ではしばしば彼の助言を求めた。
また、スレインはディードリットが人間界の複雑な事情に触れて混乱しているとき、彼女が自ら真実を見つけだせるよう適切な距離を保ちながら配慮していた。
異なる魔法体系による共闘
ふたりの関係は、魔術師と精霊使いという異なる魔法体系を補完しあう強固な共闘関係でもあった。
スレインは物質から魔力を引き出す古代語魔法を操り、ディードリットは精霊と交信する精霊魔法を行使した。
火竜山における魔竜シューティングスターとの戦いでは、スレインが防御や強化の魔法を担当し、ディードリットが風の上位精霊の力を借りて攻撃を支援するなど、長年の旅で培われた息の合った連携を見せた。
このような魔法による協力は、彼らの長い旅を通じて何度も繰り返され、多くの絶望的な危機を乗り越える原動力となった。
スレインの結婚と家族ぐるみの交流
スレインがマーファの司祭レイリアと結婚した際、ディードリットはその新たな門出を心から祝福した。
ふたりの間には娘のニースが誕生したが、ディードリットはスレインの家族に対しても、実の家族のような深い親愛の情を抱いていた。
ニースが成長し、邪神復活の陰謀に巻きこまれた際には、ディードリットはスレインとともに彼女を救い出すために危険なマーモの地へと渡った。
レイリアがかつて魔女カーラに支配されていたという不幸な過去をスレインが共に背負おうとする姿に、ディードリットは人間が持つ精神の気高さと可能性を見出していた。
スレインもまた、ディードリットとパーンとの関係の進展を良き友人として優しく見守りつづけていた。
永遠の時を見据えた友情の形
邪神戦争が終結し、ロードス島に真の平和が訪れた後、スレインとディードリットはそれぞれの選んだ道へ進むこととなった。
スレインはフレイム王国の宮廷魔術師として留まり、ディードリットはパーンとともにロードス各地を巡る思い出の旅に出た。
しかし、ふたりの友情が途切れることはなく、いつか再会することを約束して別れの言葉を交わした。
ディードリットは、ハイエルフとしての尺度で考えればスレインとの別れが一瞬の出来事であることを理解しつつも、彼と過ごした時間をかけがえのない記憶として心に刻んでいる。
スレインにとっても、ディードリットはかつての無謀な若さを共有し、共に成長を遂げた特別な戦友であり、その絆は永遠の時を経ても変わることはないのである。
レイリア
呪縛から始まった出会い
ディードリットとレイリアの最初の出会いは、レイリアの肉体が灰色の魔女カーラに支配されている状態であった。
英雄戦争後のルノアナ湖における決戦において、カーラに支配されたレイリアは、ディードリットたちの共通の仲間であったドワーフのギムの命を奪った。
この出来事により、ディードリットは当初、レイリアに対して激しい憎悪と不信感を抱くことになった。
彼女はギムの仇を討つために、カーラの支配から解放されて意識を失っていたレイリアにレイピアを向け、その命を絶とうとさえした。
しかし、魔術師スレインから、レイリア自身もカーラの犠牲者であることを説得され、その場では思いとどまった。
複雑な感情を超えた和解
カーラの支配から解放された後、レイリアはスレインと結婚してアラニアのザクソンに定住した。
数年後、パーンとともにザクソンを訪れたディードリットは、本来の自分を取り戻したレイリアと再会した。
レイリアはカーラに支配されていた時期の記憶を保持しており、ギムを殺めたという重い罪悪感を背負って生きていた。
ディードリットは当初、複雑な感情を抱いていたものの、レイリアがその過酷な運命に立ち向かい、多くの人々を救おうと献身的に生きる姿を見て、彼女を真の友人として受け入れるようになった。
ふたりの間には、過去の悲劇を共有した戦友としての深い絆が生まれたのである。
また、ディードリットはスレインとレイリアの娘である小ニースに対しても、実の家族のような親愛の情を抱いており、レイリアの家族全体の幸せを常に願っていた。
邪神戦争における共闘
マーモ帝国での最終決戦において、ふたりは破壊の女神の復活を阻止するために共に戦った。
小ニースが黒の導師バグナードにさらわれた際、ディードリットはレイリアの苦しみを理解し、命がけで救出に協力した。
また、レイリアがカーラの意志を自らの中に封印するためにふたたびサークレットを額にはめた際、ディードリットはその決断に緊張しながらも、レイリアの強い意志を信じて最後までその様子を見守った。
ふたりの関係は、単なる旅の仲間を超え、ロードスの平和を共に支える重要な柱となったのである。
ギム
種族的な嫌悪と偏見に満ちた初期の関係
ディードリットとギムの出会いは、アランの街の路地裏で行われていた乱闘の場であった。
当初のふたりの関係は、ハイエルフとドワーフという種族間に横たわる深い因縁を反映した、極めて険悪なものであった。
ギムはディードリットに対し、エルフは生まれながらの盗賊であり自尊心が強い種族であると公言し、彼女の不興を買った。
これに対し、ディードリットもドワーフを醜悪な山の種族として忌み嫌い、その無礼な物言いに激しい嫌悪感をあらわにしていた。
このように、彼らの関係は相互の偏見と種族的な対立から始まったのである。
共通の冒険を通じて育まれた信頼
種族的な反目がありながらも、ふたりは自由騎士パーンの仲間として同じ旅の隊列に加わることになった。
スレインの家で旅の目的を共有し、行動を共にするなかで、彼らの関係には徐々に変化が生じていった。
ギムは自らの非礼を認めてディードリットに謝罪し、魔神との戦い以来の古い喧嘩仲間として彼女を認める姿勢を示した。
ディードリットもまた、ギムの頑固ながらも根は善良な人柄に触れ、不承不承ながらも彼を仲間として受け入れていった。
アラニアの隠れ家におけるダークエルフやオーガーとの戦闘では、魔法と斧を用いて互いを援護しあうなど、実戦を通じた強固な共闘関係を築きあげた。
ギムの死とディードリットが流した異例の涙
彼らの絆がもっとも象徴的に示されたのは、ルノアナ湖における灰色の魔女カーラとの決戦の時であった。
ギムは自らが救出を誓ったレイリアを解放するため、カーラが放った死の魔法を身に受けて命を落とした。
このとき、ディードリットは激しい衝撃を受け、ギムを殺めたカーラの依代となっている肉体に対し、復讐の刃を向けようとするほどの怒りを見せた。
しかし、スレインの説得により、ギムが自らの命を賭してまでレイリアを救おうとした真意を知ると、彼女は声をあげて泣き崩れた。
エルフがドワーフの死を悼んで涙を流すという出来事は、ロードスの歴史においても極めて異例のことであった。
伝説として語り継がれる種族を超えた絆
ディードリットがギムのために流した涙は、宿命的な対立を続けてきたエルフとドワーフが、真に理解しあえる可能性を示した出来事であった。
パーンは彼女の涙を見て、種族の壁を越えた友情の尊さを改めて実感した。
ギムの亡骸を前にして、ディードリットはドワーフという種族への偏見を完全に捨て去り、ひとりの尊い友人を失った悲しみに暮れた。
ふたりの関係は、反目しあっていた異なる種族が共闘し、深い友情をもって結ばれるという、新たな時代を象徴する出来事だった。
ウッド・チャック
初期からの冒険者仲間としての出会い
ディードリットとウッド・チャックは、自由騎士パーンを中心とする初期の冒険者一行のメンバーとして出会った。
ハイエルフであるディードリットにとって、盗賊という職業やウッド・チャックの粗野な振る舞いは当初、理解しがたいものであったが、共通の目的のために行動を共にする中で、その関係は深まっていった。
特にアラニアにおけるダークエルフやオーガーとの戦いにおいては、ウッド・チャックの盗賊としての優れた技能がパーティの窮地を幾度も救った。
ディードリットは、彼の鍵開けや忍び足、そして不意打ちの技術が、魔法使いや戦士とは異なる形で貢献していることを認めていた。
湖畔での裏切りと呪縛の始まり
ふたりの関係が決定的に変化したのは、ルノアナ湖における灰色の魔女カーラとの決戦の時であった。
戦いの後、本来であれば破壊されるべきであったカーラのサークレットを、ウッド・チャックが自らの野望のために手にしてしまったのである。
この瞬間から、ウッド・チャックの肉体と精神はカーラに支配され、彼は仲間たちの前から姿を消した。
ディードリットはこの裏切りを、彼自身の意志ではなく、人間が持つ心の弱さや魔力の誘惑によるものとして捉えていた。
同時に、かつての仲間が歴史の影の支配者に取り込まれた事実は、彼女とパーンの心に消えない傷を残すこととなった。
十五年に及ぶ探索と救済への執念
ウッド・チャックがカーラとなって去った後、ディードリットとパーンの旅は、彼を呪縛から解放するための探索へと変わった。
彼らは十数年もの間、ロードス各地で起こる不穏な事件の背後に彼の影を追い続けた。
ディードリットにとってこの探索は、失われた仲間を取り戻すための戦いであり、不老の種族である彼女が人間の短い一生のなかで起こる悲劇に深く関わるきっかけにもなった。
彼女はパーンの隣で常にその背中を守り、ウッド・チャックを救い出したいという彼の願いを全面的に支え続けたのである。
最終決戦での解放と静かな別れ
物語の終盤、マーモの帝都ダークタウンでの戦いにおいて、ついにウッド・チャックはカーラの呪縛から解放された。
再会したときの彼は、支配されていた十五年という年月の重みにより、すっかり年老いた老人のような姿となっていた。
ディードリットは、意識を取り戻した彼を「お帰り、ウッド・チャック」と微笑みながら迎え、かつての仲間としての深い親愛の情を示した。
しかし、自由を愛する盗賊であった彼は、戦後の祝宴の最中に誰にも告げず姿を消した。
ディードリットは彼の再度の失踪を追うことはせず、彼がひとりの人間としての自由を取り戻したことを尊重し、いつかまた再会できる日を信じて送り出したのである。
カシュー
ヴァリス王城での初対面と印象
ディードリットとフレイム王カシューが初めて相まみえたのは、自由騎士パーンら一行がヴァリス王国のフィアンナ王女を救出し、ロイドの聖王宮を訪れた際のことである。
英雄王ファーンとともにパーンたちを賓客として迎えたカシューは、一行の武勇を称えた。
このとき、ヴァリスの宮廷ではエルフの姿が珍しかったため、ディードリットは貴婦人たちから質問攻めにあったが、彼女自身は人間界の複雑な儀礼や装束を窮屈に感じていた。
カシューはディードリットに対しても気さくに接し、後の宴の席ではパーンとともに戦う彼女の姿を静かに見守っていた。
砂漠の戦いにおける精霊魔法の協力
フレイム王国が砂漠の蛮族である炎の部族と交戦した際、カシューはディードリットが持つ精霊使いとしての能力を高く評価し、協力を仰いだ。
敵側が炎の上位精霊エフリートを呼び出した際、カシューは自軍に魔法の使い手がいないことを危惧しており、ディードリットの存在を非常に心強く感じていた。
ディードリットはエルフが忌避する炎の精霊との接触に葛藤しながらも、カシューの期待に応えて風の上位精霊ジン(イルク)を召喚し、エフリートの力を封じ込めることに成功した。
カシューはこの際、彼女の種族的な価値観を尊重し、無理を強いたことを謝罪している。
火竜シューティングスター戦での共闘
カシューが率いるフレイム軍が魔竜シューティングスターを討伐するために「火竜の狩猟場」へ出陣した際も、ディードリットはパーンとともにカシューの本隊に加わった。
空中を自在に飛翔し炎を吐く魔竜に対し、カシューはディードリットに魔法による全軍の支援を命じた。
ディードリットは再び風の王ジンを召喚し、巨大な竜巻によって魔竜の翼を切り裂いて地上へ叩き落とした。
この支援によって、カシューが魔竜の目に馬上槍を突き立てる決定的な機会が生まれたのである。
カシューはドラゴンの恐ろしさを痛感しながらも、ディードリットの魔法がなければ勝利は得られなかったと認めている。
互いへの敬意と信頼関係
カシューはディードリットを単なる魔法の行使者としてではなく、信頼すべき友として扱っていた。
ディードリットもまた、カシューの優れた剣技と王としての器量に敬意を払っており、彼を「本物の英雄」として認めていた。
邪神戦争の終結後、カシューが諸王を代表してパーンに「ロードスの騎士」の称号を贈った際も、ディードリットはその光景をパーンの傍らで見守っていた。
カシューは、ディードリットがパーンを支え、ともにロードスの平和のために戦い抜いた功績を深く理解していたのである。
シーリス
冒険者仲間としての出会い
ディードリットとシーリスは、邪神復活の祭器である支配の王錫をめぐる冒険において、同じ一行の仲間として出会った。
シーリスは相棒のオルソンと共に、フレイム王カシューの依頼で派遣された傭兵であり、当初はパーンたちを警戒していたものの、旅を共にするなかで強固な協力関係を築いていった。
ディードリットは当初、人間を野蛮な種族と見なす傾向があったが、シーリスのような情熱的な人間の女性と接することで、さらに人間という種族への理解を深めていった。
パーンをめぐる愛憎と嫉妬
ふたりの関係においてもっとも特徴的なのは、自由騎士パーンをめぐる恋敵としての対立である。
シーリスはパーンに対して積極的な好意を示し、人前でも露骨に彼を誘惑するような態度を取ることがあった。
ディードリットはこうしたシーリスの振る舞いに激しい不快感と焦燥感を抱いており、自分自身の嫉妬という醜い感情に悩まされることになった。
特に、人間の男性には人間の女性こそがふさわしいのではないかという不安は、ディードリットの心に深く刺さった棘となっていた。
シーリスが抱いた執着の正体
シーリスがパーンに対して見せていた好意は、実は純粋な愛情だけではなかったことがオルソンによって指摘されている。
彼女はかつて剣の試合でパーンに敗北しており、その悔しさを忘れるために、彼に執着して自分を騙していた側面があった。
ディードリットもまた、シーリスの奔放な生き方に戸惑いつつも、彼女が持つ人間としての生命力や力強さにどこか圧倒される思いを抱いていた。
このふたりの複雑な感情のやり取りは、物語を通じてディードリットが自らのエルフとしてのアイデンティティと向き合う契機にもなった。
異なる幸福への道と決別
ふたりの関係に最終的な区切りがついたのは、モス地方の戦いが終結したときである。
シーリスはハイランド王国の王子レドリックと結ばれる道を選び、王妃としてモスに留まることになった。
一方のディードリットは、そのままパーンと共にカノン解放の戦いへと赴いた。別れの際、シーリスはもはやパーンへの執着を捨て、オルソンというかけがえのない相棒の想いを背負って生きていく決意を固めていた。
その後、カノン解放の場にシーリスが竜騎士として救援に駆けつけたときには、かつての刺々しさは消え、共通の目標を抱く良き友人としての絆が確認された。
グリーバス
ディードリットとグリーバスは、カノン王国のブランシュの村にある自由軍の隠れ家において初めて対面した。
グリーバスはフレイムの騎士見習いスパークに同行してカノンへ渡ってきたドワーフの神官戦士であり、ディードリットは自由騎士パーンとともにカノン解放のために戦っていた。
初対面の際、ディードリットはグリーバスの姿を見て、懐かしそうな顔をしながらドワーフという種族は本当に礼儀知らずであるという感想を口にした。
これは、かつて生死を共にした仲間であり、彼女の目の前で命を落としたドワーフの細工師ギムのことを思い出したためである。
エルフとドワーフは種族的に反目しあう間柄ではあるが、ディードリットにとってこの「礼儀知らず」という評価は、かつての戦友を偲ぶ親愛の情が含まれたものであった。
ピロテース
種族的な対立と価値観の相違
ディードリットとピロテースは、それぞれハイエルフ(高等妖精族)とダークエルフ(森の妖魔)という、ロードス島において宿命的な対立関係にある種族に属している。
ディードリットらハイエルフにとって、ダークエルフは「邪神に魂を売った忌まわしい連中」であり、自分たちとは決定的に異なる存在として強い嫌悪の対象となっている。
一方でピロテースらダークエルフの側も、人間を軽蔑しつつ、自分たちこそが最も優れた種族であるという自負を持っており、森の闇の性質である収奪や寄生を肯定的に捉えている。
ピロテースは、ハイエルフが光の性質を受け継ぐのに対し、ダークエルフは森が持つ闇の側面を体現していると考えている。
陣営における対照的な役割
両者は物語における立ち位置としても、明確に対照的な役割を担っている。
ディードリットは自由騎士パーンの旅の仲間であり、彼の精神的な支えや精霊魔法による援護を行うパートナーである。
対してピロテースは、マーモ帝国の黒衣の将軍アシュラムの忠実な部下であり、後に「永遠の恋人」とも称されるほど彼に対して深い愛情と忠誠を捧げる存在となった。
どちらも一行の中で強力な精霊使い(シャーマン)としての能力を発揮し、それぞれの主君やパートナーの危機を救うためにその力を行使している。
善悪を超えたライバル関係
原作者の水野良によれば、ディードリットとピロテースの関係は、単なる善悪の二元論で語れるものではないとされる。
パーンとアシュラム、ディードリットとピロテースといった対比構造は、異なる正義や生き方の衝突を象徴している。
ディードリットが人間であるパーンとの交流を通じて成長し、エルフ特有の傲慢さを改めていったように、ピロテースもまたアシュラムという人間の英雄に魅せられ、一族の使命を超えた個人的な絆を築いていった。
両者は直接刃を交える場面もあるが、互いの実力や背景にある信念の強さを認めあうライバルのような側面も持っている。
最終決戦とそれぞれの結末
ロードスの運命を決した邪神戦争の終盤、彼女たちはそれぞれのパートナーと共に帝都ダークタウンの王城で顔を合わせている。
このとき、アシュラムとパーンが互いの力を認め合って一騎打ちを切り上げた際、ピロテースとディードリットもその場に立ち会い、勇者たちの決断を見守った。
戦争の終結後、ディードリットはパーンと共にロードス各地を巡る思い出の旅へと出発したが、ピロテースは敗北したマーモの民を率いて新天地を目指すアシュラムに同行し、ロードス島を去る道を選んだ。
このように、ふたりの歩みは最後まで対照的でありながら、共にひとりの英雄を愛し抜いた女性としての共通項を持っている。