ギム

外見
身体的特徴
ギムは、一般的なドワーフ族の例にもれず、人間の半分ほどの身長でありながら横幅のある寸胴な体格をしていた。
その姿は樽に例えられるほど太く、腹部は前方に突き出していた。
顔は身体の大きさに比して不釣り合いなほど大きく、全体的に重厚かつ鈍重そうな外見であった。
顔立ちと毛髪
肌の色は雪焼けしたような褐色であり、琥珀色の瞳は強い意志を感じさせるものであった。
頭髪は灰色で、顔には同じ色の立派な髭を蓄えており、その先端は丁寧に切り揃えられていた。
感情が動いた際や笑うときには、この灰色の髭が激しく震えるのが特徴であった。
装備と武器
防御具として、全身に鎖帷子を纏い、頭部には頑丈な兜を着用していた。
使用する鎖帷子は、真実の銀であるミスリルを編んで作られた特製品であり、動いても金属音が鳴らないという特徴を持っていた。
主武器は大型の両刃の戦斧であり、その刃の反対側は先端が細く尖った鉤状になっていた。
また、状況に応じて弩を用いることもあった。
性格
頑固で実直な職人気質
ギムは、人間の半分ほどの背丈でありながら、鋼の心を持つとされるドワーフ族らしい頑固な性格の持ち主である。
一度こうと言い出したら、決して後には引かない強い意志をその琥珀色の瞳に宿している。
優れた細工師としての腕を持っており、無骨な原石を鮮やかな宝石に変え、貴金属をきらびやかな装飾品に作りあげる職人としての才能を備えている。
物言いはぶっきらぼうであるが、ドワーフの特性として嘘をつくことがなく、言葉にしたくない場合は沈黙を守るという誠実さを持っている。
恩義を重んじる情の深さ
その無骨な外見や態度の内側には、真なるものを崇敬する熱い想いが秘められている。
かつて鉱山の事故で瀕死の重傷を負った際、マーファ神殿の最高司祭ニースに命を救われたことに深い恩義を感じている。
ニースが不在の間に彼女の娘レイリアが行方不明となったことに自責の念を抱き、彼女を連れ戻すために旅立つことを決意した。
ニースからの感謝の言葉に対しても不満げな物言いで応じるが、それは彼の不器用な情の裏返しであり、大恩ある人の心の痛みを取り除くために命を賭けることも厭わない。
勇敢かつ冷静な戦士としての顔
戦士としてのギムは、自らの力に絶対の自信を持っており、敵を前にしても怯むことがない。
ドワーフ族にとってゴブリンは古来の天敵であり、その名前を聞くだけで敵意を剥き出しにする激しい気性を見せることもある。
戦闘においては、闇雲に動くのではなく、一撃で決着をつけるために静かに機会を待つ冷静さを備えている。
自らの体力と戦斧の破壊力を熟知しており、竜牙兵のような魔法生物との戦いでも、その実力を遺憾なく発揮する。
他種族への接し方と変化
種族間の歴史的背景から、当初はエルフに対して苦手意識や嫌悪感を露わにし、挑発的な態度をとることがあった。
しかし、共に旅を続ける中で、エルフのディードリットに対しても「古い喧嘩仲間」として認め合う度量を見せるようになる。
仲間の中心であるパーンに対しては、初めこそ頼りなげに見ていたが、その成長を認め、時には厳しく、時には温かく見守るようになる。
スレインの深い洞察に対しても、己の目的を隠しながらも一定の信頼を寄せている。
崇高な自己犠牲の精神
ギムの旅の目的は、常にレイリアを救うという一点に集約されていた。
魔女カーラが支配するレイリアの肉体と対峙した際、彼は武器を構えることなく、彼女の心に眠る司祭としての自覚を呼び起こそうと必死に訴えかけた。
カーラが放つ強力な魔法を避けることなく正面から受け止め、自らの命と引き換えにレイリアの意識を覚醒させるきっかけを作った。
己の誓いを果たして絶命したその死に顔は、まるで昼寝をしているかのように安らかで、満足そうな微笑を浮かべていた。
能力
優れた細工師としての技能
ギムは大地の妖精であるドワーフ族であり、卓越した細工師としての腕前を持っている。
無骨な原石を鮮やかな宝石へと変え、貴金属を用いてきらびやかな装飾品を作りあげる職人としての才能は非常に高い。
彼の細工の真髄は、装飾品そのものだけでなく、それを身につける者との調和を重視する点にある。
旅の終盤に作りあげた金色の髪飾りは、レイリアが身につけることで本物の星のような輝きを放ち、彼の最高傑作となった。
確かな鑑定眼と専門知識
長年の職人生活で培われた鑑定眼は極めて鋭い。
盗賊のウッド・チャックが宝石の取引で値を吊り上げようとした際も、ギムは即座にその適正価格を見抜き、無駄な交渉を排して取り引きを成立させている。
また、ヴァリスの宮廷においては貴婦人たちの宝飾品を瞬時に鑑定し、わずかな時間でその見栄えを良くするなどの技術を披露している。
その知識は宝石だけでなく、各地の地図や伝承、古代の謎かけに関する記述にまで及んでいる。
剛腕を活かした圧倒的な破壊力
戦士としてのギムは、ドワーフ特有の強靭な体力と剛腕を武器にしている。
巨大な両刃の戦斧を軽々と扱い、ゴブリンの首を一閃で跳ね飛ばし、胴体を両断するほどの破壊力を有する。
また、その怪力は武器を失った際にも発揮され、頑丈なテーブルの脚を素手でへし折って棍棒代わりにし、魔法生物である竜牙兵の骨を砕くほどである。
大型の食人鬼であるオーガーの首を戦斧で刎ね飛ばした際にも、その実力が示されている。
冷静な戦術と精神的強靭さ
戦闘においては闇雲に攻めるのではなく、一撃で決着をつけるために静かに機会を待つ冷静さを備えている。
敵の動きを鋭く観察し、相手の体勢が崩れた瞬間を狙って必殺の一撃を叩き込むのがドワーフ流の戦い方である。
また、精神面でも非常に強固な意志を持っており、一度決めた信念を曲げることはない。
瀕死の重傷を負っても生き延びるほどの生命力を持ち、邪神の魔力が渦巻く過酷な戦場でもひるむことなく立ち向かう強さがある。
生い立ち
ギムは、ロードス島北部のターバ近郊にあるドワーフの集落「鉄の王国」に身を置く大地の妖精族である。
彼の平穏な職人生活を一変させたのは、物語の始まる約七年前に発生したドワーフ鉱山での事故であった。
他者との関係
レイリア
救命の恩義と自責の念
ドワーフの細工師であるギムとマーファ神殿の司祭レイリアの関係は、ギムが負った瀕死の重傷から始まる。
物語の約七年前、鉱山の事故で命の危機にあったギムを、マーファ神殿の最高司祭ニースが救った。
しかし、ニースがギムの治療のために神殿を不在にしていた際、その隙を突いた何者かによって娘のレイリアが連れ去られる事件が発生した。
ギムは、自分が怪我をしていなければニースが神殿を空けることはなく、レイリアが失踪することもなかったと考え、深い自責の念を抱くようになった。
恩返しとしての探索行
ギムは命の恩人であるニースの心の痛みを解消するため、行方不明となったレイリアを連れ戻すことを自らの使命と定めた。
彼は住み慣れた石の洞窟を出て、レイリアの目撃情報があったアランの街へと旅立った。
これがギムがパーンたちの冒険に加わる直接の動機であり、彼の旅の目的は常にレイリアの救出に集約されていた。
ギムはニースに対し、何としてでもレイリアを連れ帰ると固く約束していたのである。
魔女カーラによる支配とギムの葛藤
旅の過程で、ギムは魔女カーラがレイリアの肉体を支配しているという事実に直面する。
カーラの正体は、額のサークレットに精神を封じた古代の魔術師であり、レイリアはその肉体を器として利用されていた。
ギムはカーラと対峙した際、その顔にレイリアの面影を見て動きを止めてしまうなど、彼女を傷つけることへの強い葛藤を見せた。
スレインは、ギムが最初からこの真実に気づきながらも、ひとりで抱え込んでいたことを後に悟っている。
命を捧げた覚醒の呼びかけ
ルノアナ湖での最終決戦において、ギムは武器を振るうのではなく、言葉によってレイリアの意識を呼び起こそうと試みた。
彼はカーラが放つ強力な魔法を避けることなく正面から受け止め、死の直前まで彼女の手首を掴みながら、レイリアにマーファの教えを思い出すよう叫び続けた。
この命を賭した自己犠牲と必死の呼びかけが、レイリアの自我を覚醒させ、魔女の支配を打ち破る決定的なきっかけとなった。
遺志の継承と魂の絆
ギムは己の誓いを果たして絶命したが、その死に顔は満足そうな微笑を浮かべていた。
彼は生前、レイリアのために金色の髪飾りを丹念に作り上げていた。
スレインの手によってその髪飾りがレイリアの髪に差し込まれたとき、地味に見えた細工は本物の星のように輝き、ギムが説いた「装飾品と身につける者との調和」が証明された。
レイリアはギムの死を深く悲しみ自らの罪を悔いたが、スレインに諭され、ギムが命をかけて守った人生を全うすることを決意した。