エト

新装版 ロードス島戦記 (全7巻) Kindle版

目次

外見

初期の旅における神官としての装束

エトは初期の冒険において、至高神ファリスの神官としての伝統的な装いをしている。

具体的には、綿をさらして白くしただぶだぶの神官着に身を包み、腰には鮮やかな青色の帯を巻いている。

首からは、ファリスの聖印が刻まれた銀製の護符を下げているのが特徴である。

英雄戦争において、フレイム王カシューの軍に加わって戦った際には、司祭としての衣服にガウンを重ね、職杖として儀礼用の鎚鉾であるメイスを携えていた。

身体的特徴と容貌の印象

エトは黒髪を持つ男性である。その顔立ちは整っており、若い女性たちから好感を持たれるような優しそうな雰囲気を漂わせている。

性格的にも慎重で落ち着きがあるため、その外見は信頼感を与えるものである。

英雄戦争から五年が経過した時期でも、顔に丸みを帯びた若い頃の面影を強く残している。

ただし、神官王として即位した頃には、頰のあたりがすっきりとして、大人の男性としての風格が加わっている。

ヴァリス国王としての威厳ある姿

ヴァリスの国王となったエトは、公の場では質素ながらも壮麗さを感じさせる王の衣服をまとっている。

頭部には略式の王冠を戴いている。

王としての立場上、謁見の間などではかつてのような穏やかな笑顔を封印し、厳粛で冷徹ささえ感じさせる表情を見せることがある。

しかし、親しい友人たちの前では、以前と変わらない優しい笑顔を浮かべる。

邪神戦争の終結時、王城の城門に姿を現した際には、神聖な光を背負ったかのような清らかさと威厳に満ちた姿を群衆に示した。

性格

慎重さと強固な意志

エトは自由騎士パーンの幼なじみであり、感情をあまり表に出さず、常に慎重に考えてから行動する性格の持ち主である。

直情的なパーンとは対照的な気質であるが、一度心に決めたことは必ずやり遂げるという意志の強さにおいては共通している。

魔術師スレインも、エトのことをパーンに比べて思慮深く慎重な性格であると評している。

深い慈愛と平和への信念

至高神ファリスの神官であるエトは、周囲から優しく頭が良い人物として信頼されている。

彼は祭りの賑わいを見て、見知らぬ者同士が親交を結ぶ様子に平和で善なる世界の実現が不可能ではないと感じるほど、強い理想主義的な側面を持っている。

また、ゴブリン退治に消極的だった村人たちに対しても、戦いに慣れていない彼らの立場を理解し、否定的な感情を抱かない寛容さを備えている。

自らに降りかかる困難についても、神から与えられた試練であると受け止める敬虔な信仰心を持っている。

王としての責任感と苦悩

ヴァリスの国王に即位した後は、かつての穏やかな笑顔を封印し、厳格な統治者として振る舞うようになる。

これは、英雄戦争後の混乱期において、弱体化した神聖騎士団や腐敗したファリス教団を立て直すために、優しさよりも強さが必要であると自らに課した義務感によるものである。

彼は、自分が王としての資質に欠けているのではないか、あるいは臆病だと思われているのではないかと悩みながらも、王国の存続という重責を果たすために自らの感情を抑制し続けている。

法と正義による統治

エトは武力による支配を好まず、ファリス神の法と正義の心をもって国を治めることを理想としている。

アダンの街を奪還した際、敗将であるジアドに対して一騎打ちを拒み、その裁きを街の人々に委ねたのは、彼が武人ではなく神官としてのアイデンティティを保持しているためである。

彼は、国王がいかに賢明であっても救えない人々がいることを自覚しており、法に基づいた公正な社会を築くことで、戦乱に苦しむ民を救済しようと尽力している。

能力

至高神ファリスの恩恵による神聖魔法

エトは至高神ファリスに仕える神官であり、神への祈りを通じて神聖魔法を行使する能力を持っている。

彼の主な能力は負傷した者の傷を塞ぎ、失われた体力を回復させる治癒の奇跡である。

また、戦闘においては聖なる光(物理的な閃光)を放つことで、敵の目を眩ませて隙を作る技術を用いる。

ただ初期の冒険においては、傷を癒やすことは出来ても、ゴブリンの毒を解毒するだけの実力を備えてはいなかった。

ヴァリスの王に即位した後は、最高位の司祭のみが使える聖戦の呪文を発動させる力を得るまでに成長した。

この呪文はファリスの信徒たちを死をも恐れぬ勇敢な戦士へと変え、精神的な支配からも守る強力な魔力を持っている。

神官戦士としての近接戦闘技術

エトは単なる司祭ではなく、自衛のための訓練を受けた神官戦士としての側面も持っている。

主な得物は儀礼用を兼ねた金属製の鎚鉾(メイス)と楯であり、これらを巧みに使いこなして戦う。

彼の戦闘スタイルは、重装備の騎士や戦士とは異なり、比較的軽装であることを活かした素早い身のこなしを特徴としている。

自由騎士パーンと共闘した際には、パーン以上に鋭いフットワークを見せ、敵に渾身の一撃を見舞う場面も見られた。

また、複数の敵に囲まれた際にも冷静に対処し、魔法と武技を組み合わせて戦線を維持する実力を備えている。

強靭な意志力と精神的な自制心

エトの能力の根幹には、慎重で思慮深い性格に裏打ちされた強靭な意志力がある。

彼は直情的なパーンとは対照的に、常に物事を冷静に判断してから行動に移すことができる。

この精神的な強さは魔法への抵抗力としても現れており、灰色の魔女カーラが放った強力な昏睡の魔法を受けた際にも、仲間たちが意識を失う中でひとりだけ正気を保ち続けた。

自身の感覚が麻痺するほどの魔力に晒されながらも、ファリスへの祈りを絶やさず意識を繋ぎ止める精神力は、魔法使いや高位の騎士からも一目置かれている。

国家を導く統治能力と外交的知略

ヴァリスの神官王となってからのエトは、法と正義に基づく高度な統治能力を発揮した。

彼は武力による支配をよしとせず、ファリスの教えを規範として国の秩序を再建することに尽力した。

また、弱体化した神聖騎士団と腐敗したファリス教団の板挟みになりながらも、両者の和解を促し、王国をひとつにまとめるための政治的な知略も見せている。

軍事面においても、フレイム王国などの他国との外交的な駆け引きを行い、ロードス島全体の情勢を俯瞰したうえで最善の策を講じる賢王としての才覚を現した。

生い立ち

エトはアラニア王国の北部にあるザクソンの村で育った人物である。

彼は幼い頃に両親を亡くしており、天涯孤独の身であった。

同じく両親を亡くしていた幼なじみのパーンとは、似たような境遇から強い絆で結ばれていた。

十歳の頃に村を訪れた至高神ファリスの伝道師に雇われたことをきっかけに神学を学び、後にアランの神殿で修行を積んで正式な神官となった。

人間関係

パーン

パーン

ディードリット

ディードリット

スレイン

初期からの信頼関係とザクソンでの出会い

エトとスレインのふたりは、自由騎士パーンを中心とする初期の冒険者一行のメンバーとして出会った。

エトはパーンの幼なじみであり至高神ファリスの神官であったが、スレインはアラニア北部のザクソンの村で文字の読み書きを教える賢者として暮らしていた。

ザクソンの村の近くでゴブリンの脅威が発生した際、無謀にもふたりだけで退治に向かったパーンとエトを救うため、村長の依頼を受けたスレインがドワーフのギムとともに駆けつけたのが、彼らが行動を共にする直接のきっかけである。

スレインは当初、パーンとエトの若さと無鉄砲さを危惧していたが、エトの慎重で落ち着いた性格については一定の評価を下していた。

ゴブリン退治の騒動の後、パーンが武者修行の旅に出る決意をした際、エトもそれに賛成し、スレインもまた若者たちを守り導くために同行することを決めた。

冒険者仲間としての共闘と相互理解

灰色の魔女カーラを巡る一連の旅において、エトとスレインは魔法の使い手同士として、戦士であるパーンやギムを支える役割を担った。

スレインは古代語魔法の専門家であり、エトは神聖魔法による治癒や精神的な支援を得意としていたが、お互いの知識や能力の限界を補い合う関係であった。

特に、カーラが放った強力な昏睡の魔法に襲われた際、一行の中でエトひとりだけが強い意志の力で正気を保ち続けたことは、スレインに深い印象を与えた。

スレインはエトの信仰心と精神的な強靭さを高く評価し、彼を単なる年若い神官ではなく、信頼に足る聖職者として認めるようになった。

また、エトもスレインの深い知恵と魔法の実力、そして仲間を思う慎重さを信頼していた。

諸王国の重鎮としての立場と個人的な友情

英雄戦争が終結し、エトがヴァリス王国の神官王として即位し、スレインがフレイム王国の宮廷魔術師となった後も、ふたりの個人的な友情は変わることなく続いた。

立場上、公の場では国王と使節という形式的な態度を取らざるを得ない場面もあったが、密室である沈黙の間などでは、かつての冒険者仲間としての親密な口調に戻り、本音で語り合っている。

エトは神官王としてヴァリスの復興に尽力する中で、隣国フレイムの強大な軍事力やカシュー王の野心に対して警戒心を抱いていたが、その不安を率直に打ち明けられる相手はスレインであった。

スレインはエトの懸念を理解しつつも、カシュー王の真意を代弁して彼をなだめるなど、国家間の橋渡しのような役割も果たしていた。

このように、ふたりの関係は個人の友情を超えて、ロードス島の安定を支える重要な外交的な結びつきとなっていた。

邪神戦争における協力と戦後の結末

ロードス全土を巻き込んだ邪神戦争において、エトとスレインは再び一致協力して、黒の導師バグナードや灰色の魔女カーラの陰謀に立ち向かった。

スレインは邪神復活の儀式の阻止と娘のニースの救出のために知略を尽くし、エトはヴァリスの軍勢を率いてマーモ軍を迎え撃った。

戦いの最終局面において、エトは諸王国の軍勢を代表してマーモの王城に乗り込み、バグナードとの戦いを終えたばかりのスレインやパーンたちを出迎えた。

戦後、マーモの王城で行われた戦勝の祝宴の後、スレインはフレイムの宮廷魔術師として留まり、エトはヴァリス王として自国の再建に専念することになり、ふたりは再び別の道を歩むことになった。

ギム

ザクソン村での運命的な出会い

エトとギムの出会いは、アラニア北部のザクソン村近辺で発生したゴブリン退治の騒動にさかのぼる。

至高神ファリスの神官であるエトは、幼なじみのパーンと共に無謀にもふたりだけでゴブリンの洞窟へ向かったが、そこで危機に陥った。

この窮地を救うため、村の賢者スレインが助力を求めたのがドワーフの細工師であるギムであった。

ギムはスレインと共に戦場へ駆けつけ、死闘を演じていたエトとパーンを救出した。

この事件をきっかけに、若き神官と経験豊富なドワーフの戦士は、共通の仲間として行動を共にすることになった。

冒険者仲間としての旅路と交流

ふたりはパーンやスレインらと共に、ロードス島をめぐる長い旅へと出発した。

性格的には、慎重で感情をあまり表に出さないエトに対し、ギムはドワーフらしく頑固でぶっきらぼうな物言いをする対照的な関係であった。

アランの街での祭見物や「帰らずの森」への潜入など、過酷な道中を共にする中で、ふたりの間には種族や年齢を超えた信頼が育まれていった。

エトはギムの底知れない食欲や酒量に驚きつつも、その頑健さと戦士としての実力を頼りにしていた。

また、ギムもエトの神聖魔法による治癒の力を認めており、互いの役割を補完しあう関係を築いた。

窮地における連携と共闘

灰色の魔女カーラを巡る戦いにおいて、エトとギムは何度も生死を共にした。

カーラの手下に占拠された館に突入した際、エトは聖なる光の魔法を放って敵の目を眩ませ、ギムとパーンが攻撃を行うという鮮やかな連携を見せている。

また、カーラの魔法によって囚われの身となった際も、ギムはテーブルの脚をへし折ってエトやパーンのための武器を作り、脱出の機会を整えた。

ギムは、エトが背後を固めてくれていることに安心感を覚え、エトもまたギムの強靭な意志と突破力を信頼して魔法の援護を送り続けた。

ギムの最期とエトが捧げた祈り

ふたりの関係に終止符が打たれたのは、ルノアナ湖にあるカーラの館での最終決戦であった。

ギムは自らの命を犠牲にしてレイリアの意識を呼び覚まそうとし、カーラの放った魔法を全身に受けて倒れた。

エトはその場に駆けつけ、至高神ファリスに必死の祈りを捧げたが、ギムの魂を呼び戻すことは叶わなかった。

エトは深い悲しみの中でギムの両手を胸の上で静かに組ませ、その魂が安らかに眠るよう聖職者として最後の祈りを捧げた。

エトにとって、ギムは単なる旅の仲間ではなく、自らの未熟さを支え、勇気の本質を背中で示してくれたかけがえのない戦友であった。

ウッド・チャック

冒険の始まりと立場の相違

ウッド・チャックが宿屋でパーンたちの会話を盗み聞きし、賢者の学院の財宝に関する情報を提供したことをきっかけに、エトを含む一行に加わり、共に旅をすることになった。

至高神ファリスの神官であるエトに対し、ウッド・チャックは二十二年間に及ぶ投獄生活から恩赦で釈放されたばかりの盗賊であった。

秩序と正義を重んじる神官と、現実的で利益を優先する盗賊という対照的な立場であったが、パーンという共通の友人を介して奇妙な協力関係が築かれた。

共通の目的を通じた協力関係

ふたりはパーンの仲間として、カノン王国やヴァリス王国を巡る過酷な冒険を長期間共有した。

灰色の魔女カーラの企てを阻止するという大きな目的の下、ふたりは魔物が巣食うドワーフの廃墟を抜け、モスの山中に住む大賢者ウォートの塔を訪ねる旅にも同行した。

旅の道中において、エトは神官として仲間の治癒や精神的支柱としての役割を担い、ウッド・チャックは盗賊としての技能を活かして罠の解除や情報収集で一行を助けた。

カーラ事件による決別と悲劇

ルノアナ湖にあるカーラの館での最終決戦において、ウッド・チャックはレイリアの額から魔力の源であるサークレットを奪い取るという決定的な役割を果たした。

しかし、その直後、ウッド・チャックは自らの野望と力を求める誘惑に負け、仲間の制止を振り切って自らサークレットを装着してしまった。

この行為により、ウッド・チャックの精神はカーラに支配され、彼はかつての仲間であるエトたちの前から姿を消すことになった。

エトはこの悲劇的な決別を目の当たりにし、仲間を救えなかったことに深い悲しみと無力感を抱くこととなった。

歳月を経た再会と回復の奇跡

それから約十五年の歳月が流れ、邪神戦争の終盤にマーモの王城において、ヴァリスの国王となったエトは、ついにカーラの呪縛から解放されたウッド・チャックと再会した。

このときウッド・チャックは十五年にも及ぶ支配の影響もあり、白髪が混じり顔に皺が刻まれた老人の姿となっていたが、エトは彼をかつての仲間として温かく受け入れた。

エトは自身の持つ至高神ファリスの神聖魔法を用い、意識を失っていたウッド・チャックの額に手を触れて彼の気力を回復させ、その意識を呼び戻した。

ウッド・チャックは目覚めた際、自分たちの加齢を指摘しながらも自らの過ちを認めたが、エトは彼を責めることなく、かつての仲間たちが揃ったことを共に喜びあった。

フィアンナ

運命的な出会いと救出の記録

エトとフィアンナの出会いは、英雄戦争の最中に灰色の魔女カーラにさらわれた王女を救出する冒険の過程で訪れた。

カーラの隠れ家に侵入した一行が彼女の幽閉されていた部屋の鍵を開けた際、フィアンナは当初、極度の恐怖から身を潜めていた。

至高神ファリスの神官であったエトが呼びかけたことで、彼女は救い手が現れたことを確信した。

安堵したフィアンナは、薄い夜着姿のままエトのもとへ駆け寄り、しがみついて泣き声をあげ、彼に深い信頼を寄せた。

冒険を通じて育まれた恋情

救出後の旅路において、二人の間には深い愛情が芽生えていった。

エトは慎重で落ち着いた性格であり、感情をあらわにしない性質であったが、その内面に秘めた強固な意志と優しさは、過酷な運命に翻弄されたフィアンナにとって大きな支えとなった。

救出の際にエトが彼女を介抱し、マントをかけて保護したことも、ふたりの距離を縮める一因となった。

これらの経験を経て、二人は正式に恋仲となった。

婚姻と王国の再建

英雄戦争の終結後、ヴァリス王国は先王ファーンをはじめとする多くの有力な騎士を失い、深刻な後継者不足に陥った。

この難局を乗り切るため、ファリス教団の最高司祭ジェナートの推挙により、エトが新王として即位することになった。

エトはフィアンナを王妃として迎え、婚姻を結ぶことで、王位継承の正当性と教団・騎士団の結びつきを強化した。

二人は協力して、戦乱で疲弊したヴァリス王国の復興と秩序の回復に尽力することとなった。

ジェナート

至高神ファリス教団における指導者と若き神官の関係

エトとジェナートの関係は、ヴァリス王国の至高神ファリス教団における最高権威者と、その志を継ぐ若き神官という信頼関係から始まる。

教団の最高司祭であるジェナートは、英雄戦争の最中にさらわれたフィアンナ王女を救出したエトの功績と実力を高く評価した。

ジェナートは、当時まだ一介の神官であったエトを、王都ロイドにあるファリス大新殿に仕えるよう直々に勧誘している。

エトはこの誘いを受け入れ、ジェナートのもとで教団と王国を支える道を選んだ。

教団改革を目指す同志としての絆

ジェナートがエトを呼び寄せた背景には、形式主義に陥り腐敗しつつあったファリス教団を改革したいという強い意志があった。

当時の教団は、高位の司祭であっても真実の信仰をなおざりにし、奇跡の力を行使できない者が増えている状況であった。

ジェナートは、強い信仰心と神聖魔法の実力を持つエトを改革の旗頭として期待し、エトもまたその期待に応えるべく、教団を本来の姿に戻すための努力を惜しまなかった。

この共通の目的により、ふたりの間には強固な師弟関係のような結びつきが生まれたのである。

ヴァリス新王即位への推挙と政治的信頼

英雄戦争において英雄王ファーンが戦死し、ヴァリスが深刻な後継者不足に陥った際、ジェナートはエトを次期国王として強力に推挙した。

エトが神聖騎士団の出身ではなく、一介の司祭にすぎないことへの不満が騎士たちの間にあったものの、ジェナートはエトの持つ高潔な人格と、フィアンナ王女との婚姻を根拠に彼を神官王として即位させた。

エト自身は王位に就くことに戸惑いを感じていたが、自分を信じて大任を託したジェナートの期待を裏切るわけにはいかないという責任感から、その重責を引き受けている。

共同による王国の復興と聖戦への歩み

エトが国王となってからも、ふたりの協力体制は揺らぐことがなかった。

ジェナートは最高司祭として宗教的な権威からエトを支え、エトは王として教団と騎士団の和解や国政の立て直しに奔走した。

ふたりの関係は、個人の信頼を超え、神聖王国ヴァリスの法と正義を維持するための車の両輪として機能していたといえる。

カシュー

英雄戦争における共闘と出会い

エトとカシューの出会いは、アランの街で救出されたヴァリスの王女フィアンナを、カシューが賓客としてヴァリス王宮に迎えた時期にまでさかのぼる。

至高神ファリスの神官であったエトは、自由騎士パーンらとともにフィアンナ救出に貢献した一員としてカシューと面識を得た。

その後の英雄戦争の最終決戦において、エトはファリス神殿の神官戦士団を率い、カシューが指揮するフレイム・ヴァリス連合軍の左翼部隊に加わってマーモ軍と戦った。

諸王国の指導者としての同盟関係

英雄戦争の終結から数年後、エトはヴァリス王国の秩序を回復させた功績とフィアンナ王女との婚姻により、神官王として即位した。

一方のカシューは、砂漠の部族を統一してフレイム王国をロードス島随一の強国へと成長させていた。

かつて指揮官と一兵卒に近い関係であった両者は、ロードス島の安定を担う対等な国王同士として同盟を結ぶにいたる。

カシューはエトについて、若くして騎士団と教団の和解に奔走し、混乱したヴァリスを支える立派な王であると高く評価している。

国家の利害と政治的な警戒心

対等な同盟者ではあるものの、エトはカシューに対して強い警戒心を抱いている。

エトはカシューの卓越した才覚とフレイムの強大な国力を、かつての暗黒皇帝ベルドの野望と重ね合わせて危惧していた。

もしカシューがロードスの統一を目指せば、それは新たな破壊の引き金になりかねないというのがエトの懸念であった。

そのため、マーモ軍に占領されたアダンの奪還に際し、カシューから援軍の申し出を受けた際も、エトはヴァリスの自立と名誉を優先し、独力での解決を主張してこれを断っている。

邪神復活阻止に向けた最終的な結束

個人的な友情や信頼は残しつつも、公的な場では厳格な対立をみせることもあったが、黒の導師バグナードによる邪神カーディス復活の陰謀という未曽有の危機を前に、両者はふたたび強固な結束を見せた。

カシューはマーモへの出兵を決断し、エトもまた聖戦を発動してこれに呼応した。

最終局面においてアシュラムやバグナードといった強敵を打倒した後、カシューは諸王を代表してパーンにロードスの騎士の称号を授ける。

その際もエトはカシューの傍らでこれに立ち会い、新しい時代の到来を共に祝福している。

スパーク

諸王国の代表者としての出会い

スパークとエトの出会いは、スパークがフレイム王カシューの使者としてヴァリス王国の聖王宮を訪れた際に始まった。

エトは英雄王ファーン亡き後のヴァリスを治める神官王であり、スパークは当時まだ騎士見習いの身分であった。

ロイドの王城で行われた謁見において、エトはスパークをフレイムからの正式な使者として迎え、カシューからの親書を受け取った。

この際、エトは公的な立場を重んじて厳格な態度を崩さなかったため、スパークは神官王に対して非常に緊張した面持ちで接していた。

親書に託された密命とエトの配慮

カシューがエトに宛てた親書には、使者であるスパークに対する密命が記されていた。

それは、もし親書が開封された時点で盗まれた宝物を取り戻せていない場合、スパークを直ちにフレイムへ帰還させるという内容であった。

エトはこの伝言をスパークに伝えたが、任務の失敗を突きつけられたスパークは大きな衝撃を受け、自らの無能さを恥じた。

エトは、スパークが騎士としてまだ若すぎることを案じ、カシューが彼に期待をかけすぎているのではないかとひそかに危惧していた。

信頼に基づく緊急時の連携

スパークがロイドの港でマーモの工作員と接触し、ヴァリスへの襲撃の予兆を察知した際、彼はカシューの帰還命令に背いてエトに報告することを決意した。

スパークは晩餐の席を無視してエトのもとへ駆け込み、港での出来事を残らず伝えた。

側近たちがスパークの言葉を疑う中で、エトはスパークの報告を全面的に信頼し、即座に手を打つことを約束した。

このとき、エトはニースを救出しようとするスパークの決意を認め、ヴァリス軍の支援を約束して彼を送り出した。

邪神戦争の終結とそれぞれの道

邪神戦争の最終局面において、スパークは黒の導師バグナードや灰色の魔女カーラが潜む地下神殿へ乗り込み、ニースの救出に尽力した。

戦いが終わった後、神官王エトは単身で王城の地下へ入り、スパークや自由騎士パーンたちと再会した。

エトはスパークがニースを抱きかかえて守っている姿を見て、安らかな微笑みを浮かべた。

その後、スパークはカシューから正騎士に叙勲され、マーモの地に留まって復興を支える道を選んだが、エトはヴァリス王として自国の再建に専念することとなり、両者はそれぞれの立場でロードスの平和を担うこととなった。

小ニース

宿命を背負う少女と神官王の対面

至高神ファリスの神官王となったエトと、魔術師スレインと司祭レイリアの娘である小ニースとの関係は、邪神戦争の危機が迫るなかで、ヴァリスの王都ロイドにおける会談から本格的に始まった。

エトはスレインの娘である彼女の来訪を予感しており、王としての公務を一時中断して、一対一の対話の場を設けた。

このとき、小ニースは大地母神マーファに導かれた巡礼の神官としてエトの前に立ち、邪神カーディスを復活させるための祭器「生命の杖」の無事を確かめるとともに、自身の過酷な運命を告白した。

聖女たらんとする心への助言

エトは小ニースが邪神復活のための「扉」であるという事実を知ると、彼女の背負う宿命の重さを深く理解した。

そのうえでエトは、聖女としての使命感に囚われすぎる彼女に対し、ひとりの娘としての心を見失わないよう忠告を与えた。

聖職者として人々の心を知るためには、自らの内側にある人間らしい感情を大切にすべきであるというエトの言葉は、その後の過酷な試練に立ち向かう小ニースにとって大きな精神的支柱となった。

目的達成のための実務的支援

エトは個人的な信頼に加え、ヴァリス国王としての立場からも小ニースの一行を全面的に支援した。

マーモの私掠船を追跡し、奪われた祭器を取り戻すために、彼は貴重なヴァリスの軍船を提供し、一行が海路でカノンやマーモへ渡るための便宜を図った。

また、自由騎士パーンへの手紙を託すことで、カノン自由軍と小ニースたちが合流するきっかけを作り、背後から彼女の戦いを支え続けた。

邪神戦争の終結と変わらぬ敬愛

邪神戦争の最終局面において、エトは諸王国の軍勢を代表して、ひとりマーモの王城へと乗り込み、小ニースやパーンらを出迎えた。

戦いが終わり、呪縛から解放された小ニースに対し、エトは彼女が果たした試練の大きさを讃え、深い敬意を示した。

戦後、エトはヴァリスの復興に尽力し、小ニースはマーモの地で邪悪を浄化する道を選んだが、二人は光の神々に仕える者同士として、ロードスの平和を維持するためにそれぞれの立場で歩み続けることとなった。